中小企業診断士 高木悠
(1)経営計画はなぜ必要か
企業経営は、現状の事業を回しながら、先の決断をしていくことです。現状の事業を回すだけであれば、今ある人や設備、お金、情報、商品を使って、モノやサービスを提供して売り上げを上げればよいことになります。
しかし、外部環境が急速に変化している現在では、現状の活動に注力しているだけだといつの間にか変化の波に乗り遅れ、気がついた時には業績が急速に悪化している、ということがよくあります。
そのようなことを避けるために、目の前の取り組みはしつつも、今後の資金調達や人材採用・育成など中長期的な視点で経営を考えることが大切です。
経営者としての判断は常に将来の企業活動のためであり、また、経営者一人で事業を回すことはできず、内部の従業員や外部の金融機関の協力を得る必要があります。そのため、将来の事業活動がうまくいくように導く指針となるものが経営計画です。
(2)経営計画を立てる目的と効果
i.目標達成のための課題が明確になる
経営計画をたてる目的は、自社の進むべき目標を明確にし、目標達成のための方法を具体的にして、課題を解決することです。成長の機会やリスクの顕在化に対し、日々の事業に追われているだけでは、チャンスを逃すばかりか、会社の存続も危ぶまれることになりかねません。
また、事業の現状を見つめ目標を明らかにすることで、自社の目標達成のための課題がわかります。
それにより、具体的に何をすべきか、優先度が高いものはどれか、今後どのくらい人、モノ、金、情報の経営資源が必要になるかなど、多面的に対応策を検討することができるようになります。
ii.実績を振り返り、次の行動につながる
また、計画を立てることで計画と実績の比較ができ、活動の目的は達成したのか、売り上げは達成したのか、計画通りの期限で終了したのかなど、振り返ることが可能になります。
それにより、うまくいった内容であれば、次の活動に活かしたり、また、うまくいかなかったのであれば、市場や顧客の状況など外部環境は想定通りだったのか、自社の販売促進策は顧客にリーチしたのかなど原因が追究できます。それを踏まえ次への改善策をたてることで、計画達成の確率が高まります。
iii.従業員に経営者が意図する行動を促す
さらに、経営は経営者一人で行うことはできないと言っていいでしょう。会社の成長にともない、従業員に増えた業務をしてもらう必要がでてきます。
それには、経営計画を共有し、会社が目指すべき目標や具体的な対策を理解してもらう必要があります。経営者がわかっていることでも、共有しない限り従業員は決してわかりません。従業員もわかっているはず、と思うことは、経営者の思い込みでしかありません。
以上