中小企業診断士 村上知也
COVID-19感染症により、様々なイベントの中止、打合せの自粛などが続いています。
この先どうなっていくのだろうという暗いニュースが多い中で、非常に光明がさしているのが、「テレワーク」ではないでしょうか。
テレワークとは、「tele=離れた場所」、「work=働く」という意味の単語を合わせた造語で、情報通信機器等を活用して、時間や場所の制約を受けずに、遠隔勤務や在宅勤務など、柔軟に働くことができる形態です。
今まで、日本はテレワークが進んでいませんでした。どうしても顔を突き合わせての打合せが重視されてきましたが、今回の出来事でテレワークに取り組む企業が増えています。大企業が数万人の単位でテレワークへの取り組みを発表しており、今まで行ってこなかった大規模なテレワーク活用が進むことになります。
テレワークを体験することでいくつかの問題も出るでしょうが、結果として「テレワークは便利だ!」「効率があがった!」ということになれば、今回の災禍から立ち直ったあとも日本の生産性を高める大きな要因になると期待できます。
「すべての業務や打合せをテレワークで行うべきだ」とは思いません。しかし、今まで社外で顔を突き合わせた打合せを5回していたものを、リアルに集まっての社外会議が2回、別途ネットでのテレワーク会議が5回であれば、後者の方が時間も節約できた上にコミュニケーションがより円滑になるのではないでしょうか。
テレワークなら必要なタイミングで、短時間の会議を柔軟に開催できるようになります。
限られた時間や人材を有効活用して経営力を高めるために、このタイミングをチャンスに変えて、積極的にテレワークに取り組みましょう。テレワークの良いところと、注意するところを整理します。
テレワークの良いところ
企業にとっては、第一に業務の効率が上がり生産性が高まるところです。移動時間が減ることでその分、効率が上がります。第二に人材の確保が上げられます。会社の所在地から遠隔地に住む優秀な人材を確保するチャンスです。また育児や介護が原因で離職する従業員も減らすことができます。第三にコストの削減です。テレワークを活用するシステムコストは増えても、それ以上に事務所の家賃や交通費、会議費などが抑制できます。
従業員にとっては、第一に通勤時間や残業時間の削減でしょう。肉体的な疲れも防げますし、何より時間を有効に使えます。第二にお客様へのサービスの質が向上することです。単なる御用聞きでの訪問が減り、本質的なサービス提供にかける時間が増やせればより仕事の質が向上するのではないかでしょうか。そして第三にワークライフバランスの向上です。仕事にかける総時間が減少し、プライベートの時間が増加します。育児や介護と仕事の両立も可能になるでしょう。
テレワークで注意するところ
一方で、テレワークをする際に、注意しなければならない点もあります。
企業にとっては労務管理が難しくなります。テレワークでも労働基準関連法規は適用されますので、就業規則に則した運用や就業時間の管理は行わねばなりません。また、肝心の業務上のコミュニケーションが少なくなって業務の質が低下するのを防ぐ仕組みも必要になるでしょう。そのためにはなんらかのITの仕組みの導入が必要になります。最近は「zoom」というアプリが人気です。
また従業員にとっても、仕事とプライベートの切り分けが難しくなります。効率的に働けるはずが、かえってダラダラと長時間働いてしまうリスクもあります。
さらに、企業も従業員も情報漏えいにも注意を払わないといけません。総務省が出している「テレワークセキュリティガイドライン(H30/4総務省)」が参考になるでしょう。
まとめ
今までやってみたいなと思っても、なかなか足を踏み出せなかったテレワーク。
本格導入はさておき、最低限、この機会に試してみてください。
いいところだけではなく、問題点も見つかると思います。
その問題点をどのように解決していくかを考える、よいタイミングだと言えるでしょう。