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コロナ禍での中小企業の考え方と動き方

中小企業診断士 金綱 潤

御縁あって、7年間中小企業庁さんの委託事業として年間、約6,000社の事業者さんのご相談をコーディネートする仕事に携わっています。経営面の相談相手として無料で何度でも利用出来る施策になっています。これは国が税金を活用して相談対応事業を支援しているからです。年々の相談に来られる事業者さんの数も増え、業種・業態も経営ステージ(創業前、創業、事業成長、事業成熟、M&A、事業承継、事業転換等)も多岐に渡る中、私も多くの気づき頂きました。

今回は、小規模、中小企業の皆様自身がコロナ禍においてしたたかに事業存続に向けての創意工夫で乗り超えられた知恵について私が感じたことをご紹介します。

1:高級焼き肉店さんの事例

(1)コロナ前の状況

 東村山市の西武線八坂駅と西武新宿線久米川を結ぶ商店街に立地する、黒毛和牛専門の焼き肉レストラン。地元では老舗のワンランク上の焼き肉店としての高い認知度を得ていました。その一方、医療機関のMR(薬剤メーカーの営業)の医師との打ち合わせ用の高級弁当を手掛け、所沢にも和牛弁当専門店を開設し、一般消費者向けのお弁当販売も軌道に乗りつつありました。

(2)コロナの影響

コロナの影響が出始め、店への来店客が激減し売上も前年比40%まで落ち込みました。MR向けの仕出し弁当も急激に悪化しました。従来、高級焼肉店のブランド力もあり、コロナ禍で地元の消費者にも売れ行きが伸びてきていた。そこで、早期にお弁当事業に軸足をシフトすることを決断。感染者が急増する中、価格面、サービス面をどのようなレベルで実現していくかが、待ったなしで突き付けられた課題となりました。

(3)支援者が取り組んだコト

当店は、コロナが始まる前からお弁当販売を開始していました。しかし売上全体の1割程度でした。本来であれば、専門店としてターゲット顧客を絞り込む助言が相応しいと思われましたがが、未曽有の感染症社会は未経験であるため、従来の常識は通じないこともある点も事業者さんと許共有しました。さらに自粛生活で食生活に不安を持つ消費者の最大のニーズは安心・安全である点、また先行利益の獲得のためにも即座の宅配・テイクアウトの拡充を助言しました。

(4)事業者さんが取り組んだコトと成果

そこで、相談者はいち早く「コロナ緊急対応」と銘打って、近隣中心に宅配・テイクアウトのポスティング。さらに同時期に非接触型注文決済アプリを促進することで、一層の安心・安全ニーズに応えました。経営者は、助言を受け入れ早期のお弁当販売を立ち上げるため、ポスティングと非接触型注文決済アプリを決断しました。この効果もあり本年3月~6月でお弁当販売の売上は対前年同月比で平均200%増、会社全体は平均20%減に留めました。外食自粛の消費者から高級焼肉弁当に人気が高まり、元気なお店としてTVメディアの取材を受け紹介されました。そうした経緯も経て今では店舗への新規来店客が毎月増えつつあります。

2:コロナを乗り切る知恵

 紙面の都合で一事例のご紹介になりましたが、数多くの事業者さんがコロナで苦しむ中、ピンチをチャンスに変えた事業者さんも多いのも事実です。そうした事業者さんに共通するのが、

  1. 必要以上に心配しない。
  2. コミュニケーションチャンネルの複合化にチャレンジするコト
  3. 外部の知恵を積極的に取り込むコトです。

コロナの終結は残念ながらいつになるか誰も分かりません。チャンスに変えた事業者さんは
先を憂えるよりも今、自社で出来ること、したいコト、すべきコトに意識を集中させ、そのことを社内外に浸透させています。又、コロナの怖いところは、お客様、従業員さん、取引先との接点機会が放置していると希薄になる点です。逆に考えると、そうした中、様々なチャネルを使い、情報発信をすることで新規集客につながる事例も増えています。そう言うと「SNSは苦手だ」「キャッシュレス対応は難しい」「ITが出来る社員がいない」等やる前から怖気づく方も多いのですが、コロナ禍、様々は支援機関が例年以上に皆様を手厚くサポートする体制を整えています。遠慮なく、彼等の知恵や知見を借りましょう。事例の事業者さんもピンチに直面する中、この3つの点を徹底されました。
ご一読有難うございます。