中小企業診断士佐川博樹
昨年からのコロナの影響で会社が傷ついているという話をよく聞いている。テレビなどでも様々な調査結果から、中小企業の倒産や自主的な閉店などが報道されている。特に、時間短縮営業を余儀なくされている飲食店などは、非常に厳しい状況が続いている。
飲食店を例にとると、 いわゆる店内での飲食が制限される中でテイクアウト事業に活路を見出す例や出前事業者などと提携することによって宅配の事業に乗り出すでも見られる。しかし、飲食という枠からははみ出ていない。
実際、新しい事業へ進出のリスクを考えた時、現在の地形から大きくはみ出すというのはなかなか難しいものである。一方で、中途半端な新事業展開だと、単事業展開をしているリスクとあまり変わらなかったりするケースもある。
例えば、以前牛肉の安全性が疑われたということがあったが、似たようなリスクが起こると飲食店をやっていようが、テイクアウト事業をやっていようが、受ける影響はあまり変わらない。
飲食店を事業展開している企業に対して、例えば金属加工業に進出しろ、ということまでは言わないが、少なくとも業態を変えるとか、提供方法を変えるなど、リスクが分散するような工夫が必要だろう。
その意味では先に例示した、飲食店がテイクアウト事業に活路を見出すというのは特別悪い筋とは言えない。しかし、そこには先ほど例示したようなリスクがあることを認識しなければならない。
多角化展開を考える時、先ほどの飲食店が金属加工業に進出するというのは考えにくいが、 ビジネス街で飲食店をやっている事業者がターゲット客を変えるというのはありうる。ビジネスパーソンではなく、家庭の主婦を対象とするようなネットショップを開くとか、ビジネスパーソンではなくその人たちが勤めている会社をターゲットにするとか、そういった工夫は可能性であろう。
また、ノウハウを持たない事業に進出する場合にはフランチャイズに加盟して展開を考えるという方法もあろう。業態の違う他の事業者と提携したりするのも良いだろう。
いずれにしても平時では気づかない多角化の重要性に、今は気づかされる。平時にこうしたリスクを認識していた企業は、安定している時期に、既に多角化展開しているだろう。
いずれコロナは収束していくと信じているが、収束した時に安心してまた単事業のまま、事業展開を続けるのは考え直した方が良いのではないか。
以上