中小企業診断士 中保 達夫
この先の中小企業施策として、今話題になっている(特に中小企業診断士の間で)のが、事業再構築補助金である。話題になっている理由はその予算が膨大であることだ。経済産業省が発表している現時点での総予算額は1兆1485億円となっている。
同様に来年度も過去数年に渡って実施されてきた、ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金も実施される。ちなみに3つの補助金の合計予算が2,300億円と発表されており、それと比較しても、この事業再構築補助金の予算は単独の事業でありながら3補助金合計予算額の約5倍ということで、いかに目玉施策であるのかがわかる。この補助金の詳細を説明していくとシリーズ化していくほどのボリュームであるため、今回はポイントを絞って説明させて頂く。
事業目的
- ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とする
- コロナの影響で厳しい状況にある中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合等を対象とします。申請後、審査委員が審査の上、予算の範囲内で採択する
こちらは、これまでの中小企業向け補助金とほぼ同様の主旨である。
申請要件
申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している。
ちなみに、任意の3ヶ月とは直近6か月間の中から3カ月分を抽出して、前年同時期と比較する。
補助額
中小企業の通常枠 補助額 100万円~6,000万円 補助率 2/3
最大6,000万円という金額がポイントである。
過去にものづくり補助金で最大3,000万円という補助額があったが、その倍の額である。
補助対象経費
- 本補助金は、基本的に設備投資を支援するもの。設備費のほか、建物の建設費、建物改修費、撤去費、システム購入費も補助対象
- 新しい事業の開始に必要となる研修費、広告宣伝費・販売促進費も補助対象
ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金との相違点は、「建物の建設費」も補助対象経費に含まれるという点である。
記載する事業計画に含めるべきポイント
- 現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
- 事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)
- 事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
- 実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
要は、上記の内容を事業計画で詳細に書いて下さいねということである。
事業再構築とは何か
- 喫茶店が店内にスペースを設けてテイアウトコーナーを作る。
- ヨガ教室が、対面を避けるためにオンライン形式を導入する。
- 和菓子製造業が、製造過程で生成される成分を活用して、化粧品の製造・販売を開始する
この3つの事例で、事業再構築の意味が理解できたのではないか。
この原稿を書いている2月28日時点で公募要項が出ていない。現時点での更なる詳細の知りたい方は、経済産業省のHPで確認して欲しい。予算額からみても、来年度の国の目玉施策であることは間違いない。今後、他の執筆者がブログでも触れることもあるかもしれないので、その際の内容もまた参考にして頂ければ幸いである。