中小企業診断士 青木航
(1)事業再構築補助金とは
令和2年度第3次補正 事業再構築補助金とは、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、コロナの影響で厳しい状況にある中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とした補助金制度です。
主要な申請要件は、以下があります。
- 申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。
- 経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った3~5年の事業計画書を認定経営革新等支援機関と共同で作成すること。(その他諸条件あり。詳細は当該補助金公募要領をご確認ください)
今回は、要件の一つである事業再構築指針について少し詳しくご説明します。
(2)事業再構築指針について
(ア)事業再構築指針とは
「事業再構築指針」(以下「指針」)は、事業再構築補助金の支援の対象を明確化するため、「事業再構築」の定義等について、明らかにしたものです。
「事業再構築」とは、「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」又は「事業再編」の5つを指し、本事業に申請するためには、これら5つのうち、いずれかの類型に該当する事業計画を認定支援機関と策定することが必要となります。
また、指針では、これに加え、中小企業卒業枠及び中堅企業グローバルV字回復枠の要件についても定めています。
(イ)5つの指針について
ここでは、5つの指針について具体的にご説明します。
1)新分野展開とは
中小企業等が主たる業種(※1)又は主たる事業(※2)を変更することなく、新たな製品等を製造等することにより、新たな市場に進出すること。新分野展開を満たすためには以下3つ(=事業計画において示す)を満たす必要があります。
- 「製品等の新規性要件」
- 「市場の新規性要件」
- 「売上高 10%要件」
2)事業転換
「事業転換」とは中小企業等が新たな製品等を製造等することにより、主たる業種(※1)を変更することなく、主たる事業(※2)を変更することを指します。「事業転換」に該当するためには、以下3つを満たす(=事業計画において示す)必要があります。
- 「製品等の新規性要件」
- 「市場の新規性要件」
- 「売上高構成比要件」
3)業種転換
「事業転換」とは新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更することを指します。
「事業転換」に該当するためには、以下3つを満たす(=事業計画において示す)必要があります。
- 「製品等の新規性要件」
- 「市場の新規性要件」
- 「売上高構成比要件」
4)業態転換
「業態転換」とは製品等の製造方法等を相当程度変更することを指します。「業態転換」に該当するためには、以下3つを満たす(=事業計画において示す)必要があります。
- 「製造方法等の新規性要件」
- ・製品の新規性要件」(製造方法の変更の場合)又は「商品等の新規性要件又は設備撤去等要件」 (提供方法の変更の場合)
- 「売上高10%要件」
5)事業再編
「事業再編」とは会社法上の組織再編行為等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うことを指します。「事業再編」に該当するためには、以下2つを満たす(=事業計画において示す)必要があります。
- 組織再編要件
- その他の事業再構築要件
(3)各要件を満たすには
各指針の中で、必要となる要件があります。どのような状態が要件を満たしているのかについてご説明します。
(ア)製品等(製品・商品等)の新規性要件
- 過去に製造等した実績がないこと
- 製造等に用いる主要な設備を変更すること
- 定量的に性能又は効能が異なること(※3)
(イ)市場の新規性要件
- 既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
(ウ)売上高10%要件
- 新たな製品等の(又は製造方法等の)売上高が総売上高の10%以上となること
(エ)売上高構成比要件
- 新たな製品等の属する事業(又は業種)が売上高構成比の最も高い事業(又は業種)となること
(オ)製造方法等の新規性要件
- 過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと
- 新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること
- 定量的に性能又は効能が異なること(※4)
(カ)設備撤去等要件
- 既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴うもの
(キ)組織再編要件
- 「合併」、「会社分割」、「株式交換」、「株式移転」、「事業譲渡」等を行うこと
(ク)その他の事業再構築要件
- 「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」又は「業態転換」のいずれかを行うこと
※1直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく大分類の産業
※2直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく中分類、小分類又は細分類の産業
※3,4製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限って必要
(4)計画作成を検討している方は
ここまでご説明したように、申請要件に合致するためにはいくつか事前確認が必要となります。これから、計画作成を検討している方は、本格着手の前にそれぞれの要件を満たしているか確認することをお勧めします。特に「事業再構築指針」については、それぞれの要件に沿った取り組みとなっているか確認が必要です。
加えて、なぜ事業再構築に取り組むのか(事業再構築の必要性)、計画が確実に実施できるのか(実現可能性)など、検討を進めることでより良い計画作成の一助となります。
今回、事業再構築補助金の詳細までお伝えしきれていないため、その他詳細については、当該補助金の専用サイトをご確認の上、情報収集をお願いいたします。
出典:経済産業省 中小企業庁 「事業再構築指針の手引き」