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組織で生かす「コンフリクト・マネジメント」

中小企業診断士 宮坂芳絵

 

組織では、日常の業務の中や会議など様々な場面で、意見の対立や衝突が発生します。意見の対立や衝突というと、ネガティブなイメージを持ちますが、近年はそれを前向きに捉えていこうとする「コンフリクト・マネジメント」という視点が注目されています。

 

1.コンフリクトとは

「コンフリクト(conflict)」は、対立や葛藤、衝突、紛争などのことを言います。組織の中でのコンフリクト(衝突)は、1対1の場合もありますし、グループ間、組織間・・などの対象や、会議の場面などの短期的なものから長期にわたるなど期間も様々です。

また、実際の組織では、激しい対立や衝突は発生していなくても、双方で意見が食い違ったり、考え方にズレが生じたりする‥という事も日常ではあると思います。こうしたものもコンフリクトと呼んでいます。

 

2.コンフリクトは必ずしも悪くない

コンフリクトは、利害関係や意識、価値観のギャップから生まれますが、発生すると心理的にも負担が生じます。そのため正直「やだなぁ・・」と思ってしまいがちです。

しかし、必ずしも悪いものではありません。もちろん、解消のためには努力が必要な部分はありますが、その過程で互いを知ることができたり、新たなチャレンジのチャンスになったり、極めて創造的な結論を導きだすことも少なくありません。

 

3.コンフリクトが発生したら?

コンフリクトが発生した場合、どうしたら良いのでしょうか?

 

基本的には、「1.コンフリクトを察知する」→「2.双方の立場や主張を理解する(原因をみつける)」→「3.双方の立場・主張の一致点と相違点を明確にする」→「4.互いが納得する着地点を探し、協力して解決策を模索する」という4つのSTEPで考えていきます。

 

例えば、図書館で2人の学生が言い争っているとしましょう。一人は「暑いので窓を開けてほしい」もう一人は「風で書類が飛ぶので開けないでほしい」と言っています。この場合、皆さんならどうしますか?

一致点は「図書館を快適に活用したい」ということですね。相違点は「窓を開けるか・開けないか」、「温度の話と風の有無」。この場合の解決の糸口は「換気ができて(涼しくなって)、本を読んでいる学生がいる場所に風が吹き込まないようにするにはどうしたら良いか?」ということになります。その解決策は一つではないことにお気づきになると思います。

 

なお、コンフリクトを解消するための働きかけ(アプローチ)は2つに分類できます。互いのWin-winを目指す「協調型アプローチ」と、問題のとらえ方自体を変えて問題そのものをなくす「創造型アプローチ」です。組織を見ると、協調型アプローチで進める方が多いかもしれません。それは、当事者の納得感を高める可能性が高いことが理由です。

 

4.風通しの良い組織にしよう

「コンフリクト・マネジメント」成功のコツは、互いを認め合うこと、そしてコンフリクトに対する認識を変えることです。

コロナ禍もあり、職場でのダイバーシティ(多様化)はますます進んでいます。テレワークやソーシャルディスタンスなどで、お互いの考えを共有しにくい中、表面に出ないコンフリクトが増えているとも言われます。しかし、組織が積極的にコンフリクト・マネジメントに取り組み、互いの意見をしっかり聴いて問題解決に臨む姿勢をオープンにすることは非常に重要です。徐々に社内の風通しがよくなり、双方が意見を出しやすい環境も徐々に整ってきます。

 

以上