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公共事業の受注に向けた営業力強化のヒント

中小企業診断士 木村孝史

今回は、販路の一つとして公共事業に関わる商品・サービスの提供をしている事業者様や、公共事業への参入をきっかけに地域密着の事業をお考えになっている事業者様に向けて、営業力強化のヒントをお伝えします。

 

公共事業には、建設や設備メンテナンス、警備・清掃、情報システム、什器・備品、料飲、教育、出版・印刷、観光・イベントなど、様々な業種の事業者様が関わっています。

 

既に公共事業に取り組んでいる事業者様で、自社の新しい商品・サービスができたことを営業ネタにして、自治体の関係部署にそのPR資料や見積書を持って営業訪問をするのだけれども、今一つ反応が鈍く受注をめざす案件の情報をうまく聞き出せなかったり、営業できても想定した成果になかなか結びつかずお悩みでいたりする状況はございませんか?

 

また、事業化の可能性を見出してはいるものの、自治体の担当部署にどのようにアプローチすればよいのか分からず参入自体を躊躇されていたり、見積書を提出する機会を持てないまま公募を迎えてしまったりする事業者様はいらっしゃいませんか?

そのような事業者様におかれましては、ぜひ、以下の考え方や進め方で営業方法をご検討いただくことをお勧めします。

 

1.戦略や施策の把握

自治体では、「子育て・福祉」、「教育」、「文化・スポーツ」、「産業・まちづくり」などの分野別に「〇〇戦略プラン」や「〇〇振興計画」などの名称で、めざすべき姿や方向性、大まかな工程が構想・計画として定められています。これらには、実施予定の施策だけでなく、その前段で複数の視点から地域の情報が収集・整理され、現状分析が記載されています。

 

自治体への営業の準備においては、まずは、自治体のホームページに掲載された戦略プランをダウンロードし、地域の状況や自治体が掲げている課題や解決の方向性、計画の進捗状況を確認したうえで、自社事業による貢献が見込まれる施策を見出しましょう。

 

地域についてより詳しく調べるにしてもやみくもに調べるのでなく、戦略プランで示された内容を手がかりに、関連する資料や深い情報を収集していく方が近道になります。

 

2.予算編成の工程に合わせた営業

自治体の予算は、前年から検討が始められ、前年度末までに決まります。

 

国の予算でいうと、前年8月末までに各省庁において政策を実施するための事業概要や概算が要望書にまとめられ、予算を立てる財務省に提示するところから始まります。都道府県や市区町村においても国に続いて、戦略プランにおける計画に沿って各部署で予算案が立てられはじめ、財政との調整を経て、年末から年始にかけて予算書(案)としてまとめられ公開されます。

 

そして、概ね2月から3月にかけて議会での審議を経て、当初予算として成立します。この予算編成の流れに対応して、他都市等での類似事例や、想定される業務項目や工程表、参考見積などを提示して、貢献が見込まれる施策を行っている部署の担当者を支援しましょう。そうした支援をする中で、受注を見込む事業に関する情報を先行して収集し、来年度事業の受注に向け準備を着実に進めましょう。

 

3.予算書や過去の公募資料を踏まえた応募

自治体によりけりですが、予算書には概ね事業名や事業の概要、予算額、担当部署などが掲載されます。予算書(案)が公開された段階から、受注を見込んでいた事業や他に取り組めそうな事業をリストアップしましょう。予算書の記載を見ただけでは内容がわからない場合は、担当部署への問合せや直接の訪問を通じて、取組の判断ができるよう情報を収集しましょう。

 

リストには、提案競技や入札などの公募選定の日程を書き入れて社内体制を整えておき、公募になったら、申請書類の記載内容や業務仕様も十分に吟味したうえで、自社の強みを活かして利益が確保できる事業になるのか、PRできる実績となるのかなども含めて応募を判断しましょう。

 

新しい商品・サービスをつくったことをきっかけに訪問することと、地域の現状や課題を把握し、自治体がどのような施策を通じて解決しようとしているのかを踏まえて、それに貢献できる技術や設備、ツールやコンテンツを紹介するために訪問するのとでは、結果的に同じ商品・サービスを紹介するにしても、自治体の担当者への刺さり方が全く異なるものになるでしょう。

 

上記の考え方や進め方を現在の営業方法に少しでも活用していただければ、訪問した部署の担当者の受け入れ姿勢や得られる情報の質が変わってきますので、受注確度の向上にもつながると考えます。

 

以上