· 

飲食店で粗利が出ない時にチェックすべきポイント

中小企業診断士 妹川 聡

新型コロナもようやく落ち着きを見せ、街にも人が増えてきました。飲食店をのぞいても、以前よりお客が戻ってきたような気がします。

 

飲食店の経営者も、これでとりあえず一安心というところでしょう。ただ、忙しくなったけれどもなぜか利益が出ないというお店もあると思います。人件費や賃借料、その他いろいろなことが原因として考えられますが、まずは売上から原価(材料費)を引いた「粗利」をしっかりと出せないといけません。しかしながら、特に小規模店の経営者は意外と粗利が思うように出ない理由を把握できていないものです。

 

私が診断した飲食店の事例から、粗利を悪化させるポイントは5つほど考えられます。今回はそのチェックポイントについてお伝えしたいと思います。

 

価格が安すぎないか

まず考えらえるポイントは価格が安すぎないか、ということです。理由として、おそらく競合店の価格を見ながら自店の価格を第一に考え、そもそもメニューごとの原価などを計算していないケースだと考えられます。まずは、メニュー基準表を作成して原価を見える化し、今後の戦略を考えることになります。なお、材料の質の低下をともなうようなコストダウンは、顧客の離反につながる恐れもあるので、できれば避けた方が賢明です。値上げができないならば、儲からないメニューを終売とし、適正な価格の新メニューの投入の可能性を探った方が良いと思います。

 

仕入れ値は上がっていないか

2つ目のポイントは材料の仕入値が以前より上がっていないか、ということです。加工食材や調味料など価格が変動しにくい材料の値上げのみならず、一部の鮮魚なども仕入価格が高止まりしているケースもあります。先に述べたメニュー基準表は定期的に見直すとともに、材料発注を従業員に任せている場合には、経営者は仕入価格に気を配るようにしましょう。もし、材料費が従来よりも上がっていた場合は、メニューの値上げや材料調達先の見直しを検討する必要があります。なお、このケースでも材料の質の低下をともなうようなコストダウンは避けた方が賢明でしょう。

 

廃棄は多くないか

3つ目のポイントは仕込んだ食材の廃棄が多くないか、ということです。料理を素早く提供するために材料を仕込んでおくことは必要かつ重要ですが、一方で注文されなかったメニューの仕込みは廃棄することになり、粗利の圧迫につながってしまいます。日々のメニューごとの注文数を把握し、適正数の仕込みを行うことはもちろんですが、そもそもメニューが多すぎると、仕込んだ食材の廃棄はおのずと多くなります。注文が少ないメニューは思い切って終売することも検討した方がよいでしょう。

 

材料の廃棄は多くないか

4つ目のポイントは材料そのもの廃棄が多くないか、ということです。材料も食品なので、賞味/消費期限で止む無く廃棄せざるを得ない場合もあります。冷凍保存していても、冷凍焼けで使い物にならないこともあるでしょう。材料は棚卸しを定期的に行い、適正な仕入れをすることは当然ですが、ここでもメニューの多さが悪い影響を与えます。メニューを絞り込む、材料の共通化を考えたメニュー構成にするなどを考えましょう。

 

盛り付けは適切か

最後のポイントはオーバーポーション、つまり決められた以上に盛り付けることです。いくらメニュー基準表を作成して原価を適正な状態にしても、現場で盛り付け過ぎたら意味をなしません。現場の従業員には決められた量で盛り付けることを、徹底的に教育しておく必要があります。

 

以上が思うように粗利が出ない時にチェックすべき5つのポイントです。まずはメニュー基準表で原価を見える化すること、日々の注文数や仕入、仕込食材や材料の廃棄の数を把握するところから始めましょう。

 

自分のお店で粗利が出なくて悩んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひ専門家の活用をご検討ください。

以上