中小企業診断士 中保 達夫
2020年からのコロナ禍により、世の中の働き方は大きく様変わりしている。これまで、首都圏で働く人の多くは、満員電車に揺られ都内のオフィスに通勤して、朝から晩までオフィス内で働き、時には仲間と一杯やってからまた電車に揺られて帰途に着くいうのが生活サイクルだったであろう。ただ、そのような働き方は、コロナ禍が収まりつつある今でも少なくなっているのではないか。今回は、コロナ禍における働き方改革について考えてみる。
働き方改革とは
働き方改革という言葉も、世間一般的にもすっかり馴染みの言葉となったであろう。元々は、安倍政権時の目玉施策として立てられたものである。色々な試行錯誤があった後、2018年に働き方改革法が成立して、2019年より法律が施行された。
私は、社会保険労務士の資格は所持していないため、今回のこのブログで法律の内容に詳しく触れるつもりは無い。ただし、私自身が中小企業診断士として、企業の働き方改革支援に携わってきた経験もあり、今回のテーマを選んだ。
相談内容の変化
今回は、私が関わってきた各企業における最近の働き方改革における相談事例をお話しさせてもらう。
働き方改革の支援は、これまで企業の時間外労働や休暇取得に関する相談が多かった。もちろん、働き方改革に関しての支援を希望する企業であるため、自社社員の残業時間短縮や積極的な有休取得に関する意識も高い。
しかし、ここ1~2年で各企業から受ける相談内容が少し変わりつつある。まず、残業に関しては、減少している会社が多い。それは、企業の在宅勤務が増えてきたことに起因する。もちろん、通勤の負担が無くなり仕事が効率的に進んでいくこともあるだろう。また、単純にコロナ禍で業務量自体が減っているということや、人とリアルに合うという機会も激減しているのではないか。
問題は、休暇取得に関してだ。いくつもの企業で「このコロナ禍で有給休暇の取得を推進するために何か良い方法は無いか」という相談を受けることが増えた。この背景には、長期の海外旅行・帰省等がしづらくなった現状がある。
また、運動会や授業参観、果ては入学式・卒業式までが行われない学校が多くなったことも、子供がいる社員が休暇を取りづらくなった原因でもある。在宅勤務が多くなったことで、家族と過ごす時間は大幅に増えている。これまで、家族と過ごす時間を確保するために休暇を取得する場合が多かったが、コロナ禍ではあえて休暇を取得する必要もなくなったのではという声も聞いた。
コロナ禍だからこその働き方の工夫
そんな有休が進まない企業に対して、私が良く提案するのは「記念日休暇」の導入である。
「記念日休暇制度」といっても大層に構える必要は無い。良くあるパターンとしては「結婚記念日休暇」や「子供の誕生日休暇」等がある。過去に聞いた事例では「推しアーティストの周年ライブ記念日」や「連休の狭間を休みとする記念日」なんていう記念日もある。
大企業であれば労務専門の部署があり、当該部署がそれらの事項をしっかり管理してくれる。しかし、比較的経営資源が乏しい中小企業は、労務管理を経営者・各部署の管理職が直接担う場合も多い。また、主業務の片手間で実施するために、どうしても対応が疎かになってしまう。であれば、可能な限り他社の良い事例を知識として蓄えておくことが良いであろう。
働き方改革という言葉が、世間に浸透してからは、人々の働く意識が少しずつ変わっていった。そして、今回のコロナ禍により働き方自体が大きく変わった。今回のコロナ禍でわかったように、今後何が起こっていくのか予想できない時代となった。各社がそれに対応した働き方の磨き上げを行い、継続して改革を進めていくことが問われていくだろう。
以上