中小企業診断士 大山 昇
「AIで需要予測をしたい」
先般、とある社長からご相談を受けた際に出た言葉です。
この企業は食品の製造販売をしており、現在は日々の生産量を複数ある店舗からのオーダーによって決めているのですが、オーダーする人によってブレが生じやすく、しばしば売り逃しや作りすぎが発生しているので何とかしたいということで、上記のようなご発言をされていました。
本件の場合、もしかしたら社長のおっしゃる通りAIを導入することが解決につながるのかもしれないのですが、お話を伺ってみると、
- 売り逃しや作りすぎがどの程度発生しているかを把握しておらず、本件が本当に当社として最優先で取り組むべき課題なのかについて検討がされていない
- 仮にそれが最優先の課題だとしてもAI以外のソリューションについては検討していない
ということが見えてきました。
ですので、
- 現状、AIにそこまでの機能を安易に求めることは難しい面があること
- 正確な需要予測を目指すよりも臨機応変に店舗間で在庫を融通できる仕組みを構築するなど別の方法のほうが成果が出せるかもしれないこと
といったポイントをお伝えし、まずはどの程度の売り逃しや作りすぎが発生しているのかを見える化することから始めようということにしました。
IT関連のご相談では特によくあることなのですが、本件の社長のように、新しいテクノロジーが出てくると詳細な検討を経ずに、すぐにそれに飛びついてしまう方がいらっしゃいます。
新しいテクノロジーにアンテナを張ることは決して悪いことではないのですが、なんでもかんでもノータイムで取り入れてしまうのはやはり問題です。
こうしたときに思い出していただきたいものに「ゴールデンサークル理論」というのがあります。
これは、何事もWhy→How→Whatの順番で伝えると共感を生むことができる、というマーケティングの理論なのですが、IT戦略を立案する際にもこの順番で考えると非常によくハマるのです。
つまり、
- 解決したい課題は何か(Why)
- それに対して取るべき手段は何なのか(How)
- それを実現するためのツールは何か?(What)
という順番で考えるわけです。
この順番で考えると、(3)のステップで初めて具体的なITツールの話が出てくるわけですが、新しいテクノロジーにすぐに飛びついてしまう場合、
3.AIはすごい!AIで何かしたい!
2.なんか困っている業務はなかっただろうか?
と、逆の順番で考えてしまっていることで、ふと気が付くと(1)の本来解決すべき課題・目的を見失ってしまっていることが多いのです。
こうした事態を回避し、ゴールデンサークル理論のように解決したい課題(Why)から考えるために中小機構の「IT戦略ナビ」というツールがあります。
特に難しいことはなく、質問にいくつか答えていくだけで自社の課題を整理し、それらを解決するためのITソリューションについて情報を得ることができます。
非常に簡易的ではありますが、自社のIT戦略のたたき台を作ることができるというわけです。
ITについて何から始めていいか分からなかったり、これまでじっくり自社のIT戦略について検討したことがなかったりするのであれば、まずはここから検討を始めてみてはいかがでしょうか?
以上