中小企業診断士 馬場正博
決算書が読めない、会計が苦手という中小企業の社長は意外にいらっしゃいます。税理士、会計士にみてもらってるから、資金繰りだけつけていれば大丈夫、というような方もいますが、今儲かっているのか、これからも儲かるのかが、すぐにわからないというのでは正しい経営判断が迅速にできません。
会計が難しいと感じるのは、勘定科目など普段使わない専門用語が多いことなども原因で、税理士、会計士に丸投げして普段遠ざけているとますます馴染みが薄くなってしまうのかもしれません。
会計が苦手な社長でも、儲けがでるのかでないのか、簡単で直感的にわかる管理方法があるのをご存じでしょうか?
そもそも会計というと、決算書を作成するための財務会計と税務署に報告するための税務会計を指しますが、それらとは別に、管理会計という経営のための会計があります。管理会計は、会社が儲かるかどうかがすぐにわかる、経営者のための会計です。
儲けをわかりやすくするポイントの一つは、原価の考え方です。
直接原価計算という考え方では、商品を仕入れたり、製品を作るための原材料費など会社の外にでるお金を、販売量に比例する「変動費」とし、これを直接の原価として管理します。社内の人件費や設備費など会社の中でかかる費用は決まった費用「固定費」として、年間の経費を対象期間で割って計算します。
商品や製品を売ることで会社に入ってくる「売上」から「変動費」を引いた金額が「付加価値」で、「付加価値」が「固定費」を上回れば儲かる、それ以下なら赤字という計算です。
直接原価計算の考え方を基に、6つの記号と図形で直感的にわかりやく儲けを管理することができる会計手法がMQ会計です。MQ会計は西順一郎氏が考案し、商標登録されている管理会計の一つの手法です。
そこで使う記号は、P(売価)、Q(数量)、V(変動費)、M(マージン)、F(固定費)、G(利益)だけです。
会社の売上はP(売価)X Q(数量)です。
P(売価)=V(仕入)+M(マージン)ですので、
PQ(売上)=VQ(変動費)+MQ(付加価値)となります。
このMQ(付加価値)からF(固定費)を引いたものがG(利益)となるという、中学生レベルの方程式で利益を計算します。
この方程式を図示して直感的にわかりやすく表現するのがMQ会計の特徴です。MQ会計を利用すると、4つの損益分岐点がすぐにわかります。P(売価)、Q(数量)、V(変動費)、F(固定費)の4つのポイントでどれをどれだけ変化させれば儲けがでるのか簡単に計算できるので、例えば競合企業に対抗して製品の売価を下げても、販売数がどれくらい増えれば儲かるのかであるとか、全体の製造能力などバランスを考慮したうえでどの製品を多く作るのが一番儲かるのか、などといった経営戦略が簡単にシミュレーションできるメリットがあります。
次年度の事業計画をたてる際にも、必要な利益を前提に逆算して製造、販売計画をつくることができ、それに基づいて事業の儲けの進捗状況を管理することで確実に利益を確保できるので、黒字決算となり、年度末に慌てて対策をする必要がなくなります。
また、新規事業の立上げを検討する際にも使えるので、事業再構築補助金などの事業計画を検討する時も、儲かるかどうか、より簡単に計算できます。
決算書が読めない中小企業の社長でも、シンプルに儲けが見える管理会計を活用すれば、黒字体質の会社をつくることができます。特に会計が苦手な社長にはおすすめしたい経営改善、経営戦略立案のためのツールです。
以上