· 

景気低迷期の中小企業の経営力UP方策のご提案

中小企業診断士 金綱潤

円安、原油高、賃上げ要請のトリプルトレンドの中、中小企業には尚、一層の経営力UPが求められています。今回は、そうした状況下でも貴社が一歩抜き出た存在になる「簡単に出来る経営力UPのポイント」について解説します。

 

ご縁あり、私は9年前より中小企業庁委託事業である東京都よろず支援拠点https://tokyoyorozu.go.jpにてチーフコーディネーターの仕事を受託しています。その関係で年間約8千社超の経営相談をコーディネートしています。毎日多くの小規模、中小企業の経営者の方々と個々の経営状況をお聴きしながら、事業者さんの経営が少しでも良くなるために、仲間のコーディネーター、他の支援機関、金融機関等の方々と連携しながら、売上拡大や経営改善等、具体的な成果創出のために伴走支援しています。

 

 今回はそうした実体験を元に、

・円安、原油高、物価高の中でも着実に効果が見込め

・事業者さんの目線から簡単に取り組め

・しかも貴社が同業他社さんより一歩抜き出た存在になりやすい

以上3つの条件をクリアした「方策」を、ご提案をしたいと思います。

 

ウクライナ情勢を受け、燃料や非鉄金属などの取引価格が大きく変動しています。こうした中で、燃料や非鉄金属などの取引価格の変動は感染症の流行に加えて、中小企業経営に影響を与えています。交易条件とは、貿易での稼ぎやすさを表す言葉ですが、販売価格DIから仕入価格DIを引いた数値である交易条件指数の推移について見ると仕入価格DIの上昇が販売価格DIの上昇よりも大きいため、交易条件指数は悪化の傾向にあります。事業者によっては仕入価格の上昇分を販売価格に転嫁することができていない様子がうかがえます。

 

経営力UPポイントは非対面での顧客獲得力

当たり前ですがコロナ禍では、「人と人との接触」が制限されます。結果的には、これにより、「店頭来店」や「対面営業」を前提とする事業者は大きな経営上の打撃を受けました。

 

一方、例えば近隣住民向けの居酒屋がお店の人気メニューの評判・ノウハウを活かして「家飲みおつまみセット」を考案してテイクアウト事業にチャレンジし、広域にお客様を獲得された事例もありました。マンツーマンの個別指導が売りの高校受験の進学塾が人気カリスマ講師の合格テクニックを満載した単科授業をオンラインで有料配信し、新たな顧客層を獲得した事例もありました。

 

課題は色々ありますが、コロナ禍においては、既存のお客様に頼るのではなく、対面以外の方法で新たに顧客を開拓していく力が事業存続と成長のカギになります。

 

あまりお金を掛けずに貴社の認知度UPにつなげるコト

1)公的支援機関の力をもっと上手に利用しよう

 

中小企業の最大の課題は「想定しているターゲット顧客層に殆ど知られていないこと」つまり認知度不足だと感じています。自社のHPやSNSでの訴求を高めるのも大切ですが、ターゲット顧客層の目線から考えると、アクセス数が元々信頼されている媒体への貴社の露出UP策にチャレンジしてみて下さい。 例えば、地域に信用力を持つ公的支援機関(例:商工会議所等)を活用した無償の知名度向上支援メニューを活用する事も有効です。その殆どは、簡易な申請手続で効果が見込めるものが多い特徴で、他の事業者にはあまり知られていないので、貴社広報の差別化には効果的です。

 

以下、簡単に出来る施策活用策について解説します。

 

例えば、東京商工会議所https://www.tokyo-cci.or.jp/の会員になれば以下の無料メニューがあります。因みに入会金と年会費は法人企業の場合は資本金規模によって異なりますが個人事業主の方は入会金3,000円、年会費10,000円です。https://www.tokyo-cci-nyukai.jp/

 

1)東京商工会議所 社長ネットhttps://www.tokyo-cci.or.jp/shachonet/index.html

社長である事業者さんのプロフィールを社長ネットと呼ばれるサイト上に無料掲載して貰えるサイトです。プロフィール紹介欄に自社の事業紹介やホームページのURLを掲載することも出来ますので自社の知名度UPに役立ちます。

 

2)東商新聞「BIZDANE」 https://www.tokyo-cci.or.jp/market/b-den/

東京商工会議所の会員に配布される機関紙「東商新聞」にて、会員企業の新しく発売する製品や商品(新メニューを含む)、新サービス、新店舗を無料で広報してくれる企画です。東京商工会議所の会員企業数は約8万社超なので、事業連携や引合い誘導に効果的です。但し掲載に関しては、広報価値があると東京商工会議所広報部が認めた内容になります。

 

3)ザ・ビジネスモールhttps://www.tokyo-cci.or.jp/market/b-mall/

全国400超の商工会議所・商工会が共同運営(事務局:大阪商工会議所)する「商取引支援サイト」です。自社をPRしたい、自社の技術・強みを知ってもらいたい、ビジネスパートナーを探したい、仕入れ先を見つけたい、複数の企業から見積りをもらいたい、販路を拡大したい等の課題解決に役立てるためのツールです。簡単に自社の露出を増やすことが可能になります。

 

2)使い勝手の良い自治体支援施策を活用して認知度を高めよう

 

ここ数年、国、東京都等から、コロナ禍の中小企業支援のための様々な補助金施策が公募されています。しかしながら申請要件や申請書作成の難解さや手続の複雑さ、補助金の対象経費項目も限定的であるため、使い勝手の面から言うと良いとは言えないものも多いのも事実です。申請後の事業進捗では、採択基準がシビアで様々な報告義務が課されているものも多く、必ずしも自社にとって役に立つものばかりとは言えません。その点、コロナ禍、区や市の各自治体は国や都・県の補助金施策を良く研究して、より地域の事業者の課題解決に即した施策を用意しています。概ね採択率が高いのも魅力です。申請に際しては中小企業診断士の経営相談を受け、自社の経営課題や重点的に取り組むべき方向性を確認し、補助金をどのような取り組みに活用するか決定しながら申請が出来るものもありますので使い勝手は良いです。

 

 

3)取引先金融機関とのコミュニケーションを良くして経営力を高めよう。

 

コロカ禍、政府系金融機関、民間金融機関から多くのお金が多くの事業者へ低利で融資されました。そうした金融機関の方々からすれば、融資先の事業者さんの新事業が着実に成長していく願いは一層、強くなります。ですので数多くの取引先を持つ金融機関へ、貴社が「どんな顧客層にどのような価値を提供出来るのか?」について改めて説明してみましょう。上手くニーズが合えば新規顧客開拓につながるビジネスマッチングに繋がるかもしれません。コロナ禍に加え円安、原油高、賃上げ要請のトリプルトレンドの中、中小企業者さんの経営環境は不透明です。

 

以上ご提案したことは、新たなお金の支出も殆どなく、「よし!やってみよう」と言う簡単な意思決定だけで済む話です。貴社の事業が少しで早く、成長軌道に乗られること、心からお祈りします。

 

参考文献1. 東京商工会議所ホームページ https://www.tokyo-cci.or.jp/