中小企業診断士 社会保険労務士 溝口晃子
今年4月、中小企業において、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が従来の25%から50%以上に引き上げられました。
大企業に関しては、既に2010年の労働基準法の改正によって50%に引き上げられていましたが、中小企業については摘要が猶予されてきましたが、いよいよ適用されることになりました。
1.中小企業の定義
中小企業の定義は以下のとおりです。
小売業:資本金5000万円以下または常勤労働者数50人以下
サービス業:資本金5000万円以下または常勤労働者数100人以下
卸売業:資本金1億円以下または常勤労働者数100人以下
その他の業種:資本金3億円以下または常勤労働者数300人以下
2.具体的な対応
これによって、以下のいずれかの対応が必要になります。
(1)割増賃金率の引き上げ
月60時間を超えた時間外労働時間に対して、50%以上の割増賃金率による割増賃金を支払う。
(2)代替休暇の活用
月60時間を超える時間外労働を行った労働者の健康を確保するため引き上げ分の割増賃金の支払の代わりに有給の休暇(代替休暇 )を付与する。
3.必要となる対応等
以下の事項についても対応が必要です。
(1)就業規則の変更
割増賃金率の引き上げに合わせて就業規則の変更が必要となる場合があります。
<就業規則の記載例>
(割増賃金)
第○条 時間外労働に対する割増賃金は、次の割増賃金率に基づき、次項の計算方法により支給する。
(1)1か月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次のとおりとする。この場合の1か月は毎月1日を起算日とする。
1)時間外労働60時間以下・・・・25%
2)時間外労働60時間超・・・・・50%
3)深夜労働・・・・・・・・・・ 25%(時間外労働60時間を超える場合は75%)
(2)時間外労働の削減
時間外労働を積極的に削減する取り組みを行う必要があります。働き方の改革の一環としても、この機会に時間外労働の削減に企業全体で取り組むことが求められています。
具体的には以下のような事項をご検討ください。
1)経営者、管理者の意識改善、率先垂範
2)企業全体での労働時間削減への取組身の推進・強化
3)業務の見直しおよび業務の効率化
4)労働時間の可視化による適正管理
5)ITシステムの導入による業務の効率化
6)アウトソーシングの導入
7)教育研修の推進・強化
4.公的支援策の活用
以下のような公的支援策がありますので、活用をご検討ください。
(1)補助金
1)働き方改革推進支援助成金
生産性を向上させ、労働時間の縮減等に取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成する制度です。
2)業務改善助成金
生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定以上引き上げた場合に、その設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。
(2)相談窓口
以下の相談窓口で相談に応じていますので、ご利用ください。
○労働基準監督署労働時間相談・支援コーナー
○都道府県労働局
・パートタイム労働者、有期雇用労働者関係:雇用環境・均等部(室)
・派遣労働者関係:需給調整事業部(課・室)
○働き方改革推進支援センター
○産業保健総合支援センター
○よろず支援拠点
○ハローワーク
○医療勤務環境改善支援センター
以上