中小企業診断士 中保達夫
ここ1年、物価高が止まらない。今年に入ってからも、エネルギーコスト同様、食品も値上げラッシュで一般家庭の負担を増大させている。ましてや、飲食店は一般家庭以上にその影響を受けているのは言うまでもない。私も仕事上、飲食事業者からよく価格値上げの相談を受ける。今回は、スムーズな値上げを進めるにはどうしたらよいかを考えてみる。
強引な値上げは顧客離反につながる
飲食的が値上げをするにあたって一番注意することは、顧客にどう納得してもらえるかである。
私がランチで良く利用していた店が、今年に入って顕著な値上げを行った。具体的には、これまで平均1,000円であったランチを1,300円まで値上げしたのだ。また、サービスだった食後のコーヒーは、追加で100円が掛かるようになった。
値上げして以降一度訪問したが、値上げに対する説明は特に無く、サービス・食材の質量とも上がっているわけではなかった。それ以来、この店でランチを取ることは無くなった。現在も、仕事の関係でこの店の前を通ることもあるが、以前に比べ客が減っていることは外から見てもわかる。
飲食店の値上げ相談について
そんな現状を目の当たりにしながら、最近とある飲食店から値上げに関する相談を受けた。こちらの事業者は、昨秋各メニューの値上げを行ったばかりである。しかし、今年に入ってからも、食材原価・エネルギーコストの上昇が収まらず、再度の値上げを検討している。
このお店は、顧客の7割が店のウリである食べ飲み放題プランを利用すると聞いた。今回の値上げは、この食べ飲み放題プランの値上げをどうすべきか逡巡しているという相談である。
この店の食べ飲み放題プランで、一番原価が高いのは生ビールと瓶ビールである。まず、この提供パターンを見直すことを提案した。このプランには、500円プラスすれば、プレミアムの日本酒や焼酎、ワインが飲めるプランがある。生ビールは、こちらのプレミアムプランに移行してみるのはどうかと話した。店主は「いや、生ビールを外すと客が減るかも、、」と、こちらの提案を最初は渋っていた。
しかし、瓶ビールのみの提供に変えることで食材原価だけでなく、生ビールの提供に掛かる手間と時間も抑えられ客単価が上がる可能性があるという説明を加えた。この提案により、店主は飲み放題の通常プランから生ビールを外し、プレミアムプランに移行することとした。
もちろん、メニューには生ビールが通常の飲み放題プランから無くなったことに協力を求める説明は表記し、常連さんには個別に説明するようにした。今のところは特に苦情もなく、現状顧客は想定したよりも減っておらず、食材原価も抑えられるようになった。
双方が納得した値上げを
お店が思っている以上に、顧客は価格値上げに敏感である。
「あの店、また値上げしたよ」という顧客同士の会話も、最近はよく耳にするようになった。値上げしても顧客離反にならないためには、お店・顧客双方が納得できる値上げとそのアフターフォロー行うこと。もちろん、サービスの質はこれまで以上に高めていかねばならないことは言うまでもない。
以上