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芸の道に学ぶ、自社製品・サービスの向上

中小企業診断士 宮崎弘亘

 

年末年始に思う

このブログの記事は、2023年の年の瀬に執筆しています。

 

年末年始の過ごし方は人によってそれぞれですが、新しい年への何ともいえない期待感の高まりは、クリスマスを経て新年を迎えるこの時期ならではのものはないでしょうか。コロナ禍が明けて街の賑わいも活気を取り戻し、イベントも目白押しです。

 

最近では、そんな年末の風物詩のひとつに、漫才師の日本一を決める大会のTV中継があります。私はいつも楽しみにしており、毎年欠かさず観ています。漫才に限らず昔から演芸が好きで、新年は正月興行の寄席に行っては落語や漫才、漫談、曲芸等色々な芸人の名技、妙技に触れるのがここ数年の恒例になっています。

 

鍛錬を経た芸人の姿には、尊敬の念と共に、自分の人生においても斯くなる仕事人でありたいと新鮮な気持ちに返らせてもらうことができます。また、古典落語を聴くと、大衆の笑いのツボは今も昔もさほど変わらないことに気づかされます。

 

生活の中に潜むちょっとしたことが、視点を変えると笑いに変わり、時にさわやかな感動を運びます。世間の小難しいことも「大したことではない」と一時にせよ思わせてくれることが、演芸や笑いの力なのだとつくづく思います。

 

芸の道と自己鍛錬

さて、2023年の漫才日本一の大会も文句なしに笑わせてもらいました。エントリー者約8500組の頂点に立ったのは、新進の若いコンビでした。少しの運や風向きの影響があったかもしれませんが、努力と実力で勝ち取るには凄まじい倍率です。一視聴者として、彼らの勝利に拍手を送ります。独特の世界観に引き込まれ、もっと観たい!と思ったのが率直な感想です。

 

漫才はその時の流行や時代性が色濃く反映される演芸です。同じネタが来年も同様に面白いとは言えないのが、その難しいところだと思います。それだけに、演者が第一線で活躍するには、センスだけでなく、継続的な鍛錬と成長が求められます。優勝者に限らず、決勝の舞台に立った漫才師たちのこれまでに思いをはせると、並々ならぬ努力を感ぜずにはいられません。売れてナンボの世界、面白くなければ振るい落とされてしまいます。

 

以前、当事者の方に話を聞く機会があったのですが、ネタを作り、練習し、場数を踏み、そしてまたブラッシュアップし、どうやったらウケるかの研究を重ね、その上でしのぎを削る厳しい世界だと言われていました。老若男女に受け入れられるには、芸はもちろんのこと、服装や見た目、内から出る教養や品の良さも大切です。要は、多面的な検証や錬磨が必要なわけで、独りよがりを戒め、時には他者の厳しい意見を飲み込む度量も必要でしょう。

 

学びを得ること

そして足元に視点を移します。

 

芸人が客前で披露する芸を、自身(私も個人事業主です)や市井の事業者にとっての商品やサービスとなぞらえると、これとかけ離れていないことに気づかされます。

 

商品やサービスを生み出す組織やシステムは、芸人にとっての稽古や鍛錬同様目に見えない部分と言えるかもしれません。演芸場での観客の反応のように分かりやすい判断基準はないかもしれませんが、商品やサービスのほとんどが、常に他者・他社との比較に晒され、時を経て売上等の結果として現れます。

 

忙しい日々の仕事に追われるとついつい後手になりがちですが、時には客観的に自社製品・サービスを見つめなおすことも大切です。同業他社のサービスを受けてみて良い面を取り入れ、悪い面を反面教師にしたり、飲食店であれば客の目線で汚れている場所が無いかを確認したりすることもその一環でしょう。顧客にアンケートを実施し、製品への評価や要望を聞くことも考えられます。

 

まずは、目の前の顧客にとっての最善を目指すことが、自社が立つ舞台で輝くための近道と言えます。年末年始に限らず、普段忙しくてなかなか自社を省みる時間が取れない経営者、事業者も少なくないと思います。しかし、視点を変えると様々なことから学びを得ることができます。それは、語り継がれる古典落語のように、普段見る何気ない景色を笑いに変える、芸人たちの習わしに似ていると感じます。

 

以上