· 

2024年、コロナ禍後、金融機関の資金繰り支援はどうなる?!

中小企業診断士 丸田佐和子

 

ゼロゼロ融資の返済がピークを迎えている

 新型コロナウイルスの影響に対する資金繰り支援の中心であった「ゼロゼロ融資」ですが、昨年の夏から今年の春頃に返済のピークを迎えるといわれています。元金返済開始までの据置期間に事業の立て直しに集中していた、事業環境の改善を待っていた、という中小企業者は多いのではないでしょうか。昨年春以降、経済が正常化し、コロナ禍を脱したといわれていますが、まだコロナ禍前にまで売上が回復していない、原材料費高騰、円安、燃料費の高騰などの影響が大きく、利益率が低下している、そんな声も多く聞こえてきます。そのような経営環境下で既存の債務の返済に加えて、ゼロゼロ融資の返済が始まれば、今後、資金繰りが厳しくなる事業者が増えることが予想されます。

 

金融庁の金融機関向け指針が変わります

 ゼロゼロ融資の借り換えを支援する「コロナ借換保証」も今年3月末までの受付となるなど、コロナ対策としての資金繰り支援は終わりを迎えようとしています。コロナ禍で金融機関も積極的に融資を行った結果、債務が増えた中小企業者は多いのですが、これからは金融機関の融資審査も通常運転にシフトしていくと思われます。

昨年11月、金融庁は2024年春に「金機関向け指針を資金繰りから事業再生に支援の軸足を移行するように明記する」、と発表しました。これまでのゼロゼロ融資やその借換など単なる資金繰り支援にとどまらず、経営改善支援や事業再生支援について、先延ばしすることなく実施する必要がある、という内容です。

 

 全国銀行協会が公表している「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」も今年1月に改訂され、事業者との対話やコンサルティング機能を発揮して、経営改善を先延ばしすることなく、一歩先を見据えて支援に取り組むという内容になっています。これまで資金繰りを「つなぐ」支援であったものが、事業の「再生」に注力していくことが示されています。

 

中小企業はどう対応するべき?

 単純に借入をして急場をしのぐ、という相談では金融機関は首を縦に振ってくれなくなるということが想像できます。どのように事業を再構築していくのか、どのように経営改善を行っていくのか、実現可能性が認められる事業計画を策定して、計画達成に向けた行動をしていくことが求められてきます。コロナ禍では先行きの見通しが立てづらく、事業者にとってもなかなか実現可能性のある計画策定ができませんでした。金融機関も蓋然性の判断が難しかったのが実態です。今後は、計画をしっかり立てて行動していきましょうという方向性に変わっていくことになるということです。

 

 そして、その計画策定を前倒ししていくことが必要だと筆者は考えています。今現在は問題なくても、将来的に資金繰りの悪化が懸念されるのであれば、一日でも早く、現状把握と計画策定に着手していくことをおすすめします。経営者自身では計画策定が難しい、という中小企業者は多いと思います。上記ガイドラインでも「金融機関や社外の実務専門家(税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁護士等)と平時から十分なコミュニケーションを図り、助言を得ながら客観的な状況把握に努める」こととしており、「計画の策定過程や実行過程において課題が生じた場合には、金融機関や実務専門家へ早期に相談し、助言を得ることが重要である」とも明記されています。金融機関や私たち中小企業診断士などの実務専門家とともに計画策定やその実行を進めていくことができます。

 

 資金繰りに不安を感じている場合はもちろん、現時点では不安がない場合でも現状把握と計画策定を行い、将来の資金繰りと金融機関取引の安定化に向けた対策を今から始めてみませんか。

以上