中小企業診断士 佐川博樹
原則、連鎖倒産防止
皆さんは、中小企業基盤整備機構がやっている、連鎖倒産防止の共済制度「倒産防止共済」に入っておられますか?
中小零細企業の場合、特定の顧客に依存していることなどがあります。その顧客がくしゃみをすると、中小企業は風邪を引くなんていう話がありますが、まさにそういうことですね。
万一、そのような顧客が出て倒産してしまったとき、売掛金を回収できなくなったりします。倒産防止共済はそんなとき、自身が掛けていた掛け金の10倍まですぐに借入を起こせるというものです。
これならとりあえず、連鎖倒産は防げる可能性が高まります。
節税対策にもなる
この倒産防止共済の掛け金は「損金」になるので、利益を減らす効果もあります。
ある期の経常利益が、100万円出たとしましょう。その際、倒産防止共済に12ヶ月分(以内だったらOK)を前払いする制度を使って、12万円(月額1万円の掛け金と仮定)を納付したとしましょう。
すると、100-12=88となり、88万円にのみ税金がかかってくるという仕組みです。
課題は現金を用意する必要があること
利益が出ていても、資金繰りの関係でキャッシュが少ないということはゼロではありません。
しかし、倒産防止共済は掛け金を前払いするならキャッシュを用意する必要がある点は注意が必要です。
これがクリアできるなら、何年かに分けて、最大800万円までは掛け金を預けられます。
もうすぐ3月末。決算を迎えられる企業も多いでしょう。今から損金処理するならまだ間に合うかなと。
なお、預けた掛け金は貸借対照表に出てこない簿外債権になりますので、管理をきちんとしましょうね。
改正には注意
この倒産防止共済ですが、税制改正がありました。節税封じです。
掛け金は800万円まで掛けられることになっていますが、これを任意解約すると掛け金が戻ってきます(期間によっては100%出ない場合あり)。その後、再加入すれば、また節税対策ができるようにこれまではなっていました。
が、令和6年(2024年)10月以後に任意解約すると、その後、2年間は再加入しても掛け金を損金として落とせないことになりました。
こうなると、任意解約後、2年間は掛け金を掛けても課税されますから、節税目的の人にとっては残念となります。
一方、節税目的は第二の目的で、第一義的には他社の倒産の影響を受けないようにと考えている経営者にとっては、マイナスです。何かの理由で任意解約した後の2年間は、税金を払いながら倒産防止の共済に入るしかなくなります。共済に払う現金は必要な上に、税金にも現金が出ていくというダブルパンチです。
とはいえ、800万円までは掛けられるので、いっぱいいっぱいまでは掛け金をしっかり掛け、取引先の倒産に対応しておきましょう。
以上