中小企業診断士 金綱 潤
御縁あって、10年間、中小企業庁さんの委託事業として年間、約9,000社の事業者さんのご相談をコーディネートする仕事に今年の3月まで携わって来ました。年々の相談に来られる事業者さんの数も増え、業種・業態も経営ステージ(創業前、創業、事業成長、事業成熟、M&A、事業承継、事業転換等)も多岐に渡る中、私も多くの気づき頂きました。
今回は、コロナ禍で多くの事業者さんが利用されたゼロゼロ融資の返済到来期に来ている事業者さんが多い時節柄、金融機関の方々との「コミュニケーションツール」としての表記のテーマについて採り上げさせて頂きました。
資金繰り表作成の目的とはそもそも何でしょうか?これは「一定期間のおける資金の動きを管理する」ため作成されるものです。従って予定と実績の観点から作成すべきで、前者を予定資金繰り表、後者を実績資金繰り表と言います。
予定資金繰り表と実績資金繰り表を比較出来るように作成すれば、「将来の資金不足が起きないかどうかを予め予測する」ことや予定と実績の対比により「営業活動や仕入れ(購買活動)の精度UPに繋げる事が出来ます。
金融機関の方々は、事業者さんから何を聴きたいか?と言うと、「いくら借りたい・・」ではなく、「どのように資金を事業活動へ効果的に活かして、利益を上げて借りた資金を健全に返せるのか?」と言う一連のストーリーが聴きたいわけですから、彼等のと「コミュニケーションツール」としては、予実が一覧できる「資金繰り表」は大変重要な資料になる訳です。
「勘定合って銭足らず」とは帳簿上の収入と支出の計算は合って利益が出ているのに実際には
現金が足りないことを表現した諺ですが、収支管理と資金管理の違いからこうした事態は発生します。
例えば、日常的な事業活動の成果を診る経常収支の項目には、前月からの繰越高に現金売上高、売掛金回収高、受取手形期日落ち、受取手形割引高、その他収入等の経常収入を加えて、現金仕入高、買掛金支払高、手形決済高、人件費、諸経費、その他支出等の経常支出を控除し経常収支過不足を予実面でチェックし、資金繰りが機能しているか検討します。
しかしながら営業担当者と経理担当者間での情報共有が上手くなされないと資金回収が遅れたり、場合によっては回収不能になってしまい、売掛金が焦げ付いてしまうリスクも恐れも発生してしまいます。中小企業は一般的に財務面では、大企業以上にきめの細かい資金管理が求められますので営業担当者こそ、資金繰り表を理解し、「どのような営業活動が会社の資金繰りを改善させるのか?またその活動をどのように取引先へ理解して貰うのか?」について、我々支援者の知恵も借りながら、①収支と資金、②予定と実績、③前月、今月、来月の3つの視点から
具体的な「打ち手」を決めて改善して頂きたいと思います。
他方、支払手形の決済や買掛金の支払いについては、自社の信用問題になりますので
預金の残高不足を絶対に起こさぬように「先読み」する癖を社内で共有したいものです。
その際、前月と今月で経費予実の相違状況を販売管理費の項目別に比較した上、
大きく増減している点については、経理、営業、生産、経営者がその実態と理由を
共有し、今後の経営改善に活かす「癖」をつけて頂きたいと思います。
詳細なコンサルテーションが必要になる事もある場合はTASKSまでお気軽にご相談下さい。皆様の事業の成功を心よりお祈りします。
ご一読有難うございます。
以上