中小企業診断士 小黒 光司
5月23日に2023年の実質賃金が前年比2,2%下落したとの発表がありました。
同期間、名目上の賃金は初任給の増加等により平均1,3%上昇していますが、この差は物価上昇によるものです。簡単に言うと物価が3,5%上昇したということです。
円安の影響で輸入価格が上昇したため国内物価が上昇したとされていますが中小企業においては価格転嫁がうまくいかず、賃金増加が結びついていないのが現状です。
一方輸出型大企業と金融関係は史上最高の利益を上げていますが、まだ賃金上昇に反映されていません。
また、2023年度の国際収支は経常ベースで史上最高の黒字となっています。
こう見ると現在の日本は国として世界で最高に豊かな国になっているのですが、多くの国民は収入が増えておらず、世界の一人当たりの所得ランキングが毎年低下しています。
GDPで見ると国際収支が大幅プラス、設備投資はプラス、国内消費需要がマイナスとなっており今後、国内消費需要をプラスにする必要があります。
このカギを握るのは、雇用労働者の80%を占める中小企業が利益を上げ大幅な賃上げを実現することが必要になります。
このところ日産自動車を始め大企業が「下請け法違反」で勧告を受ける事案が多くみられます。
上場企業が下請法違反で勧告を受け、公表されると株価が下落し売り上げも減少します。
日産自動車は決算発表で大幅な利益減少を発表しました。
下請け型製造業を始め、小売業、卸売業、サービス業、運送業においても値上げを実行し利益を確保し賃上げを行うことが喫緊の課題となります。
同業者が談合して値上げを行うと独禁法違反となりますが、中小企業者も「労働組合」と同様に団結して値上げを実現することが必要になっています。国も中小企業の同業者が話し合って一斉値上げをすることを黙認している状況です。
値上げを実施するためには、値上げ交渉をする必要があります。値上げにあたってはBtoBにおいては個別交渉、BtoCにおいては値上げ告知が必要です。
いずれにせよ、原価の上昇と賃上げのために値上げをお願いすることが重要です。データをそろえ理論的に交渉することにより、実現できます。
交渉が不得手の人は「お願いはタダ」「言いにくいことは人のせいにする」「データをそろえる」「情に訴える」ことが効果的です。
具体的な方法が分からない方は専門家であるお近くの中小企業診断士にご相談ください。
以上