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渋沢栄一の挑戦する姿勢

中小企業診断士 佐藤正樹

1.新紙幣にこめられたメッセージ

 原稿執筆は2024年6月ですが、7月3日に新紙幣が登場し、1万円札の肖像画が渋沢栄一になります。

 一説には偽造防止にはひげの複雑さが大事であり、ひげの写真がなかったので渋沢栄一は今まで紙幣に採用されなかったらしいですが、偽造防止の対策が備わって満を持しての登場となります。

 

 このタイミングで我が国の最高額の紙幣に登場したことにメッセージ性を感じます。一般の方からすると渋沢栄一の印象は薄いようですが、経営者の皆様や私のような経営支援者から見たら日本近現代史で1、2番の企業経営者ではないでしょうか。

 

2.渋沢栄一とは

 改めて、渋沢栄一を振り返ると、明治時代の日本における資本主義の父であり、日本初の株式会社を設立し、現代の多くの大企業に繋がる約500の企業の創業に関与しました。多くの公共事業や教育機関の設立や支援も行い、日本の近代化に大きく貢献しています。

 

 また、経営哲学として日本の経営者にいまだに多くの影響を与えています。「論語と算盤」などで「道徳経済合一説」を唱えていて、企業は利益を追求するだけでなく、社会的責任を果たすこととのバランスが大事であるとしています。欧米風にいうと「ノブレス・オブリージュ」ということでしょうか。日本の武士道の高潔さを入れて、高い社会的地位には義務が伴うことを指摘しています。NHKの大河ドラマでは現代にも連なる某財閥の当主が徹底的な儲け主義者として描かれて、対比されていました。

 

3.挑戦する姿勢

 道徳経済合一説ももちろん大事ですが、渋沢栄一の連続起業家としての挑戦意欲はどこからエネルギーが湧いてきたのかに関心が行きます。

 

 現代の日本では失われた30年などと言われています。支援先の外国人社長に日本人はガッツがないけど大丈夫かなどと心配されたりしますし、他国の経済成長を見ると日本が取り残されていることに危機感を感じます。

 

 日本では、明治維新、第2次大戦戦後の復興、その後の企業の海外進出など、先人が、経営や研究、技術開発で幾多の挑戦をして来ました。新紙幣が登場する、今こそ、渋沢栄一の挑戦する姿勢と経営のありようを改めて学んでみるのはいかがでしょうか。

 

以上