中小企業診断士 榎本博之
慢性的な人材不足から、レジ対応は小売業全体の大きな課題となっている。
コロナ禍での非接触意識の高まりや買物行動の意識がシフトしたことにより、レジ対応を取り巻く環境は変化した。決済のみをお客様自身で行うセミセルフレジや、商品スキャンを含めてレジ対応をお客様自身が行うフルセルフレジの導入が進み、小売店とお客様とのコミュニケーションの取り方が変化している。
そんな中でも依然として「レジはお客様満足の最終関門」と呼ばれ、どれだけ商品やサービスが優れていても、レジ対応一つで評価に影響を与える重要な要素である。省力化や生産性向上への注力が高まる中で、どのようにレジ対応を位置づけていけばいいのか、考えてみたい。
スーパーマーケットの業界団体が発行している「2024年度版スーパーマーケット白書」によると、レジ決済システムの導入割合はセルフ精算(いわゆるセミセルフ)レジが78.2%、セルフレジが31.1%、セルフバーコードスキャンが13.2%となっている。
セミセルフレジの導入が80%近くを占めており、多くのスーパーマーケットで導入が進んでいるのが分かる。
このようにセミセルフレジの導入は進んでいるが、セルフレジの導入は30%程度に留まっている。スーパーマーケットの中にはセルフレジの導入自体を行っていないところも少なくない。
これは、店員とお客さまとのコミュニケーションの場としてレジが有効に活用していると考えているからにほかならない。挨拶や声掛けによる安心感だけでなく、スキャン時の商品確認や販促施策の対応など買物時の「不」を取り除くチェックが、お店の評価を高める原動力になっているからだ。
お客様自身が認識していなくても、アプリやクーポンでの割引案内をしてくれると、お客様のお得感は上昇する。実際、私自身レジで精算を済ませようとアプリを提示したところ、購入品の中にアプリクーポンの該当品があり、案内してくれたアルバイトがいた。
販促施策の多くはお客様が主体となって行動しないと利用できないと考えがちだが、レジ対応次第では、お客様に気づきを与えるきっかけになり得る。また、購入時の気持ちの余裕を作るのもレジ対応に求められる要素といえよう。
セルフレジが浸透し、お客様のペースで会計ができる一方で、ペースがまちまちなため後ろの視線を気にする人は少なくない。セミセルフレジでも、生産性を重視するあまり、スピードを重視した対応がある一方で、あるスーパーマーケットでは商品スキャン時と精算レジの案内の間を少し取り、お客さまとのアイコンタクトをしたうえで誘導している。これも小さなことであるが、人がいることでの安心感につながっている。
レジ対応の場をお客様とのコミュニケーションのやり取りとしての機能と考えれば、どのような対応が必要なのかを検討し、買物時の安心感につながる雰囲気づくりが求められよう。ベストマッチングとなるレジ対応はどんなものかを今後も追求していく必要がある。
以上