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価格転嫁はできていますか?

中小企業診断士 中保達夫

 

1年半前の当コラムで、飲食店の価格値上げに関して、スムーズな値上げを進めるにはどうしたらよいかについての中小企業診断士としての目線から、色々書きました。今回は、上り続ける人件費を価格に転嫁できているかというテーマで書かせていただきます。

 

物価上昇は落ち着いたが

実はここ1年程、物価全体は落ち着いています。国内企業物価指数をみると、2020年から2023年前半に掛けて物価が著しく上昇しました。具体的には、その3年弱の期間で20%近くも伸びたのです。2024年に入ってから物価上昇は一定の落ち着きを見せて、現在はほぼ横ばいの状況です。

物価とは対照的に、未だに上がり続けているものがあります。それが人件費です。人件費の上昇を示す指標として、都道府県別の最低賃金があります。東京都では、2019年に最低賃金が時給1,000円を超えたということで話題となりました。その後も毎年最低賃金は上がり続けており、今年の10月からは1,163円となっています。

 

人件費は昔と比べてどれくらい上がっているのか

私の生まれ故郷である石川県の最低賃金は、今年の10月から984円となっています。こちらも、昨年の933円から約5.5%の値上げとなりました。なぜ、石川県の事例を出したかというと、私が高校時代にアルバイトとして働いていた当時の時給が460円だったからです。高校生であったため、当時の最低賃金位だったのでしょう。それが、当時から比べると倍以上となっています。

 

ちなみに、その時代のサラリーマンの平均年収は400万を少し超える位であったと記憶しています。

 

最低賃金に合わせて、平均年収もそのカーブを描いているかというとそうではありません。昨年度国税庁の調べでは、日本のサラリーマンの平均年収は約460万円となっています。35年間と比較して増加率は10%弱しかありません。このような背景を考えると、国が「物価高を上回る所得増へ」を掲げ色々な策を打っているのも当然のことといえるでしょう。

 

価格交渉にあたって

価格を設定するにあたって、今後は人件費の上昇もしっかり価格に転嫁していかねばならなくなります。

 

現在は少子化で若い人材を採用するのが、本当に厳しくなっています。給与を上げないと、人が採用できない。また、転職エージェントの市場も年々伸び続きけているため、既存社員の給与も上げて行かないとすぐ他の条件の良い会社に転職されてしまうという負のスパイラルも生まれてきています。今後、企業はこれまで以上に自社の製品・サービスのクオリティを維持・向上させながら、価格を上げていかなければならないでしょう。

 

公的支援機関を上手に活用する

中小企業庁では、価格交渉・価格転嫁がうまくいかない事業者に対して、相談窓口をしっかり設けています。

全国47都道府県に存在するよろず支援拠点では「価格交渉サポート窓口」があり、無料で相談に乗ってくれます。また、価格交渉に関して取引先と問題が生じた場合は、専門の相談員や弁護士からアドバイスがもらえる下請けかけこみ寺も全国に存在しています。価格交渉・価格転嫁がうまくいかず悩んでいる企業は積極的に活用して欲しいと思います。

 

以上