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新たな仲間を受け入れるために

中小企業診断士 宮坂芳絵

 

4月になり、新たな仲間を迎え入れる職場も多いかもしれません。

新しい仲間との関係は、職場に新しい風が吹きますし、今までにない発想や視点をとり込む貴重な機会でもあります。

一方で、迎え方次第では、よくわからない間に早期に離職してしまったり、相手との関係性を築くのに時間がかかってしまい、指導や対応に苦慮するなどの悩みを伺うことも少なくありません。

 

新入社員など、自分とは違う若い世代の仲間を受け入れる際、相手の育ってきた社会状況や学校教育の影響などをある程度考慮しておくことは、関係性を築く上でのヒントの1つになり得ます。

例えば、今年の新入社員の育ってきた環境を見ていると、経済・社会環境では、リーマンショック後の不景気の時代に育っていると同時に、阪神や東日本などの大きな災害、新型コロナウィルスなどの影響などを、多感な成長期に目の当たりにしていて、経済は不安定なものと捉えている傾向があるといいます。

 

雇用環境も「働き方改革」などの言葉が行き交い、これまでの日本的雇用慣行といわれる長期雇用が能力重視に変更になったりしました。また、柔軟な働き方やワーク・ライフバランスなどの推進が大きく取り上げられ、働く意味や働き方にも多様性を感じて、自分自身がどうありたいのか、その意味を問うことがあったかもしれません。

学校教育に目を向けると、2002年から導入されたゆとり教育は、仲間意識や個性を大事にする教育が従来よりも強くなっており、相手への思いやりがある一方で、競争意識を持ちにくかったり、苦手な人や意見の異なる人とのコミュニケーションを苦手にしてしまう傾向につながっているともいわれます。

こうしてみると、昭和時代とは育った環境から得られる影響は大きく違います。そして、その違いが世代間ギャップを生み出し、相手を理解しにくいと感じることも少なくありません。

 

こうした中で、まず意識してほしいのは「心理的居場所感」をつくるということです。

「居場所」という表現は、教育臨床や心理臨床の領域で、他者との関係の中で「ありのままでいられる」ことと「役に立っていると思える」ことを意味します。

つまり、「心理的居場所感」は、自己の存在感を実感し精神的に安心していられ、ありのままでいることができ、役に立っていると思えること、ともいえます。

 

新たな職場で初めての仕事を担うメンバーは、この「心理的居場所感」を得るまでに時間がかかります。

その意味では迎えるメンバーが、相手を受け入れると同時に、安心して職場になじめるように促すこと、適切な指導方法を進めることでムリなくスキルアップをさせること、仕事の成長を評価(フィードバック)するという、従来から大事とされている手法は、思った以上に重要です。

 

相手との関係づくりも、人材育成もマニュアル通りにはいかないものです。自分自身も無理することなく、相手と向き合いながら、新たな仲間ともよりよい職場づくりができるよう進んでいきましょう。

 

以上