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パワハラの定義知っていますか? その5

中小企業診断士 川口 紀裕

 

筆者担当の前回記事に続いて厚生労働省の定義を用いながらパワハラとは何かについて確認していきましょう。

 

パワハラに該当するもの・しないもの

厚生労働省はパワハラに該当するものとしないものについて一例を提示しています。その内容をご紹介します。前回は1.身体的な攻撃、2.精神的な攻撃、3.人間関係からの切り離しを見ましたので、今回はその続きをみていきましょう。

 

4.過大な要求

●該当する

  1. 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること
  2. 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること
  3. 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること

○該当しない

  1. 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること
  2. 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多いい業務の処理を任せること

 

※解説

部下を成長させるために、今までよりも難易度の高い業務を任せることは過大な要求には該当しません。また、どの職場でも繁忙期はあるので、その時期に残業を依頼することは過大な要求には当たりません。

 

5.過小な要求

●該当する

  1. 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること
  2. 気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと

○該当しない

  1. 労働者の能力に応じて一定程度業務内容や業務量を軽減すること

 

※解説

この他に例えば病気で入院した部下が職場に復帰した際に、体調面に配慮して業務を一時的に軽減することも過小な要求には該当しないと考えて良いでしょう。

 

6.個の侵害

●該当する

  1. 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること
  2. 労働者の性的指向、性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること

○該当しない

  1. 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと
  2. 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向、性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと

※解説

該当する②に記載されている暴露行為のことをアウティングといいます。パワハラに該当する行為として知らない方が多いので注意しましょう。

 

出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針」より

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf