中小企業診断士 足立秀夫
日本の少子高齢化や労働環境の変化等によって中小企業の人手不足は深刻な状況です。
中小企業白書2024年版には、人手不足が中小企業にとって避けて通れない経営課題であることが強調されています。とくに人口減少や高齢化が進む中で、中核人材や業務人材の不足が深刻化していることが指摘されています。
中小企業における中核人材や業務人材の不足は、とくに深刻な課題となっています。中小企業白書2024年版の調査データでは、約7割以上の企業が中核人材の不足を感じており、業務人材についても半数以上が不足していると回答しています。
この不足感は、業種によって求められる人材の質が異なることを示唆しており、例えば製造業や情報通信業では中核人材の不足感が特に顕著です。中核人材は、事業の中核を担う高度な専門性を持つ人材であり、業務人材は日常業務を遂行する労働力を指します。
建設業や宿泊業、飲食業等の労働集約型産業では、両方の人材不足が約8割に達している状況です。
また、働き方改革や労働条件の改善が進むなかで、従業員側のニーズと企業の提供する環境が一致しないことも問題の一因となっています。
人材が不足する業界では労働負担が増加し、結果として生産性低下や離職率の上昇が予想されます。中小企業では、必要な人材が不足することで事業の縮小や廃業につながるリスクがあります。
帝国データバンクの調査によると、2024年の人手不足倒産件数は前年比約1.3倍増となり、2023年の260件から2024年の342件へと増加しています。とくに、建設業や物流業での影響が顕著です。
労働者の高齢化も深刻であり、今後もマンパワーの拡大は期待しにくいところから、人手不足による倒産は今後も高水準で推移することが予想されます。
こうした課題を解決するためには、従業員の育成や職場環境の改善、多様な人材の活用、DXによる業務効率化などが有効な対策とされています。
さらに、政府や支援機関が提供するガイドラインや専門家派遣、補助金、税制、金融支援等を活用することも重要です。
中小企業者の人手確保のための活動状況は多岐にわたりますが、2025年現在、以下のような分野で積極的な取り組みが見られます。
1.賃金引上げ
最低賃金の引上げが進むなか、多くの中小企業が賃金改善および福利厚生向上に取り組み、従業員の確保につなげています。
2.働き方改革
柔軟な働き方を導入する企業が増加しています。リモートワークやフレックスタイム制度を採り入れることで従業員満足度を向上させています。
従業員が自己成長を実感できる教育プログラムの提供やキャリアアップの機会を設けることが離職率低下につながります。
3.地域との連携
地元の学校やコミュニティとの協力を通じて、若い人材の確保を目指す企業も増えています。
4.デジタル化推進
業務効率化を目的としたデジタルツールの導入が進んでいます。これにより、少ない人員でも業務を円滑に進められる環境を整えています。
また、採用プロセスにおいても、SNSやオンラインプラットフォームを利用することで、広範な候補者にアプローチが可能となります。
5.高齢者や女性の活用
生産年齢人口の減少を補うため、高齢者や女性の雇用を積極的に進める企業が増加しています。
外国人労働者や高齢者、障碍者など多様な人材を受け入れることで、イノベーションを促進し、企業の魅力を向上させることができます。
皆様の会社ではどのような工夫をされていますでしょうか?
何か気になることがあれば中小企業診断士に相談してみてください。
以上